こんにちは。
ブログをご覧いただきありがとうございます。
Miryです。
今回は、簿記2級を98点で合格した立場から、財務諸表の問題を時短で解答する方法について、私自身が実践した方法をご紹介したいと思います。
1つ1つの仕訳方法の解説については、どのテキストもカバーしてくれてると思います。
それに、財務諸表の概要や書き方自体も、カバーしてくれていると思います。
でも、「財務諸表問題を時間内に解く方法」って、市販のテキストに載ってないことが多いですよね。
ネットで調べても、そこまで情報が出てくるわけでもなく。
私が使ったテキストでも、過去問の解説で多少触れられていたものの、具体的な「攻略方法」については書かれていませんでした。
そんなわけで、自分で少しずつパターンを覚えていき、攻略方法を考えることで、時短解答を達成しました。
なので、無事合格して落ち着いたこのタイミングで、財務諸表の問題を時短で解答する方法についてまとめていきたいと思います!
こちらの記事では、「貸借対照表問題の時短な解き方」を解説します。
前半の記事で、損益計算書バージョンも解説しています!
例題
こちらのテキストから、問題を引用しました。
(問題:P26,27/解答:P71~75)
問題用紙

解答用紙

解法
今回の問題は、損益計算書と貸借対照表の2つを作るというものですが、実際の試験ではどちらか1つだけを作るということが多いです。
というか、2つとも作るとなったら、きっと時間が足りないと思う…。
なので今回の解説では、「損益計算書だけを作る場合」と、「貸借対照表だけを作る場合」の2パターンに分けています。
(今回の記事は貸借対照表だけ)
先に結論を言っておくと、時短のポイントは、
・すべての仕訳をする必要はない!
・各財務諸表が完成すればOKという意識で進める
練習のためには、そりゃあ着実に1つずつ仕訳した方がいいです。
けど、実際15~20分くらいで問題を解くには、
いちいち仕訳なんてやってらんない!!
なので、なるべく仕訳をしないで、損益計算書を完成させていきます!
各仕訳が不安な方は、まだ時短チャレンジしないほうがいいです。
財務諸表の類題をいくつか解いて慣れてきてからのチャレンジをおすすめします。
流動資産
現金預金(ついでに受取手形と買掛金も)
貸借対照表の一番初めから順に埋めていきますので、まずは「現金預金」について見てみます。
(しかしこの問題の場合は、ついでに「受取手形」と「買掛金」も片づけられます。)
(B)決算整理事項等 を見ると、「現金預金」の変化に関わりそうなのは、(1)のようですね。
①は、入金の「連絡未通知」に当たるものなので、本来であれば「当座預金」が2,400円増えて、「受取手形」2,400円分を手放したことになります。
当座預金:+2,400
受取手形:-2,400
②は、「未渡小切手」にあたります。
支払い終わったと思っていた「買掛金」を払い忘れていたことが発覚し、同時に、引き落とされたと思っていた「当座預金」が引き落とされてなかったことが分かったので、
支払った「買掛金」/引き落とされた(と思っていた)「当座預金」を元に戻す必要があります。
当座預金:+5,760
買掛金:+5,760
③は、「未取付小切手」にあたるもので、待っていればいつかは予定通り支払われるはずなので、修正仕訳は不要です。
よって、各勘定科目の増減も無しです。
①、②で増減があった勘定項目をまとめると、以下の通りです。
当座預金:+2,400+5,760
受取手形:-2,400
買掛金:+5,760
他に、「現金預金」、「受取手形」、「買掛金」の増減に関わる整理事項も無いようです。
なので、(A)決算整理前残高試算表 に書かれている残高との合計を計算していきます。
【現金預金(当座預金含む)】
59,680+2,400+5,760=67,840
【受取手形】
46,000-2,400=43,600
【買掛金】
59,900+5,760=65,660
そして記入していきます。

売掛金
(B)決算整理事項等 を見ると、「売掛金」の増減に関わる仕訳は無いことが分かります。
よって「売掛金」は、(A)決算整理前残高試算表 に書かれている「42,900」を記入していきます。
ついでに、「受取手形」と「売掛金」の合計も記入していきます。

貸倒引当金
(B)決算整理事項等 を見ると、「貸倒引当金」に関わりそうなのは、(3)のようですね。
なお、今は流動資産について考えていますが、(3)の中で「長期貸付金(固定資産)」についても言及されているので、まとめて計算していきます。
「受取手形」と「売掛金」については、合計が86,500円ということが分かっているので、その2%(1,730円)が「貸倒引当金」となります(流動資産の方の)。
( (A)決算整理前残高試算表 にある1,100円は、この1,730円に含まれることになります。)

そして、「受取手形」と「売掛金」の合計から、「貸倒引当金」を差し引いた残高も記入していきます。

次に、「長期貸付金」についても記入しちゃいましょう。
「長期貸付金」についても、 (3)までの間に残高に変化がないようなので、 (A)決算整理前残高試算表 の通り「10,000」ということになります。
「貸倒引当金」は、「長期貸付金」にはかからないそうなので、単純に「長期貸付金の2%」である200円を貸倒引当金繰入額とします。
ついでに、「長期貸付金」から「貸倒引当金」を差し引いた残高も記入しておきます。

有価証券
(B)決算整理事項等 を見ると、「有価証券」に関わりそうなのは、(4)のようですね。
※(5)は固定資産の「投資有価証券」に該当します。
「株式100株(原価@750円、時価@770円)」とあるので、この情報を基に計算していきます。
(A)決算整理前残高試算表 には、「売買目的有価証券」75,000円とあります。
これが、「100株×@750円」にあたるものですが、決算時点ではそれが 「100株×@770円」 ,
つまり残高が77,000円になっています。
これを記入していきましょう。

商品
(B)決算整理事項等 を見ると、「商品」に関わりそうなのは、(2)のようですね。
貸借対照表に書く残高は、「最終的な商品残高」なので、基本的には「実地棚卸」分の残高だけ計算すればいいことになります。
175個×@350円=61,250円

もしも、原価よりも時価の方が高い場合には、「商品評価損」の計上も行いません。
そのため、商品の残高計算式は、【実地棚卸数量×原価】となります。
(時価をを考慮しなくなります。)
前払費用
(B)決算整理事項等 を見ると、「前払費用」の変化に関わりそうなのは、(7)のようですね。
前払いしたのは960円だそうなので、それをそのまま記入します。
そして、流動資産がすべて埋まったので、合計を計算して記入していきます。

固定資産
備品(減価償却累計額)
(B)決算整理事項等 を見ると、「備品」及び「減価償却累計額」に関わりそうなのは、(6)のようですね。
他に「備品」や「減価償却累計額」について言及している個所はなさそうなので、(A)決算整理前残高試算表 の「備品」の残高「72,400」から見ていきます。
まずは、「備品」の残高をそのまま記入します。

そして、減価償却累計額を計算していきます。
72,400円のうち、2,400円は×3年11月1日に購入したらしいので、「前からある70,000円」と「当期の11/1に買った2,400円」に分けて計算します。
70,000円
→(備品-減価償却累計額)の20%
=(70,000-25,600)×0.2
=8,880
2,400円
→減価償却費20%のうち、購入月(11月)~期末(3月)の5か月分
=2,400×0.2÷12×5(月割計算)
=200
合計:8,880+200=「9,080」
さらに、(A)決算整理前残高試算表 に元々書かれている、25,600円を足した「34,680」を、貸借対照表に記入します。
そして、 「備品」から「減価償却累計額」を差し引いた残高も記入しておきます。

投資有価証券
「売買目的有価証券」の時にちらっと触れた通り、(5)の「その他有価証券」が「投資有価証券」に該当します。
「株式100株(原価@750円、時価@770円)」とあるので、この情報を基に計算していきます。
(A)決算整理前残高試算表 には、「その他有価証券」15,000円とあります。
これが、「100株×@150円」にあたるものですが、決算時点ではそれが 「100株×@160円」、
つまり残高が16,000円になっています。
これを記入していきましょう。

また、「その他有価証券」を評価する際には、「評価益」ではなく、「その他有価証券評価差額金」という純資産の項目を計上しますよね。
なので、この場で「その他有価証券評価差額金」も計算しておきます。
「その他有価証券」が15,000円→16,000円に上がっただけなので、1,000円としたいところですが…。
税効果会計の適用により、「その他有価証券評価差額金」は60%の600円になります。
評価・換算差額金合計と一緒に、書いてしまいましょう。

また、評価が上がったということは、「繰延税金負債」が発生します。
金額は、評価額1,000円の40%である400円です。
「繰延税金負債」については、この後出てくる「繰延税金資産」と相殺するため、今は一旦どこかにメモでもしておきましょう。
繰延税金資産
(B)決算整理事項等 を見ると、(5)以外で「繰延税金資産(もしくは負債)」の変化に関わりそうなのは、(10)のようですね。
期首時点での「貸倒引当金損金算入限度超過額」は800円です。
その証拠に、800円の40%である320円が、 (A)決算整理前残高試算表 の「繰延税金資産」に記入されています。
この「貸倒引当金」は取り崩されなかったようですので、差異も解消していません。
なので、「貸倒引当金損金算入限度超過額」も800円をキープしたまま、当期中にさらに400円が積み上がり、期末には合計1,200円になっています。
この、積み上がった分の400円について、税効果会計を適用します。
400円の40%
→400×0.4
=160円
損金算入限度額を超えた分を不算入にする(損金だと認めてあげない)ということは、会計上の費用よりも税務上の損金の方が少なくなります。
ということは、会計上の税金が税務上の税金よりも少なくなるということです。
よって、当期にかかる法人税が減ります(法人税等調整額が貸方に)。
「法人税が減ってラッキー」ということで、当期としては「資産が増えた」ことになるので、「繰延税金資産」が発生することになります。
減った分の法人税は、この差異が解消したら払わないといけなくなります。
「繰延税金資産」は、
「将来に税金を繰り延べたけど、当期としては資産が増えたね。」
ということなのです。
(「繰延税金負債」はその逆)
「繰延税金資産(もしくは負債)」の計算が完了したので、計算結果をまとめます。
【繰延税金資産】
(10)より160円
【繰延税金負債】
(5)より、400円
相殺すると、「繰延税金負債」が240円。
そして、 (A)決算整理前残高試算表 の「繰延税金資産」には既に320円とあります。
そのため、上で相殺して算出した「繰延税金負債」240円と再度相殺すると、最終的には「繰延税金資産」が80円残ります。

そして、固定資産の欄を埋めることができたので、合計額を記入します。

さらに、流動資産と固定資産の合計額を、「資産の部」合計として記入します。

流動負債
支払手形
(B)決算整理事項等 を見ると、「支払手形」の増減に関わる仕訳は無いことが分かります。
よって「支払手形」は、(A)決算整理前残高試算表 に書かれている「29,400」を記入していきます。

未払費用
(B)決算整理事項等 を見ると、「未払費用」の変化に関わりそうなのは、(8)のようですね。
未払いなのは500円だそうなので、それをそのまま記入します。

未払法人税等
(B)決算整理事項等 を見ると、「未払法人税等」に関わりそうなのは、(9)のようですね。
課税見込額自体は「10,640円」と分かっているものの、まだ支払ってはいないため、「未払法人税等」として記入します。
また、流動負債の合計も記入しておきます。

固定負債
長期借入金
(B)決算整理事項等 を見ると、「長期借入金」の増減に関わる仕訳は無いことが分かります。
よって「長期借入金」は、(A)決算整理前残高試算表 に書かれている「60,000」を記入していきます。
また、固定資産の合計、負債の部の合計も記入しておきます。

株主資本
資本金~別途積立金
(B)決算整理事項等 を見ると、「資本金」、「資本準備金」、「利益準備金」、「別途積立金」の増減に関わる仕訳は無いことが分かります。
よって、(A)決算整理前残高試算表 に書かれている金額を記入していきます。

繰越利益剰余金
「繰越利益剰余金」については、(A)決算整理前残高試算表 の残高「7,000円」に、「当期純利益」を足した金額を記入する必要があります。
しかし、ここでは損益計算書を作成していない(ことになっている)ので、「当期純利益」の金額は分かりません。
ただ、「繰越利益剰余金」以外の金額は全て分かっているため、「資産の部」355,420円と、「負債の部」+「純資産の部」合計額の差額が「繰越利益剰余金」ということは分かります。
資産の部:355,420円
負債の部+純資産の部:332,700円
差額:22,720円
これが、元々の残高7,000円と、当期純利益を合計した、決算時の「繰越利益剰余金」残高となります。

最後に、まだ空欄になっている合計額を記入すれば、貸借対照表の完成です!

慣れれば、仕訳を書くことなく埋められるようになっているので、時短効果ありますよね!
【おまけ】課税見込額が不明な場合
今回の問題では、課税見込額「10,640円」が問題文に書かれていたので、「未払法人税等」もそのまま記入するだけで済みました。
しかし中には、貸借対照表だけを問われている場合においても、「法人税等は当期純利益の〇%」といった記載しかないこともあります。
ということは、「未払法人税等」及び「繰越利益剰余金」を算出するのに手間がかかります…。
そういった場合は、急いで損益計算書を書いて「当期純利益」を算出するか、下記のような方法で解くことができます。
(例題の数値を使用します。)
【前提条件】
・法定実効効率:40%
・(10)で既に「法人税等調整額」△160円が発生
【手順①】
「資産の部」と、「負債の部」+「純資産の部」合計額の差額を計算します。
資産の部:355,420円
負債の部+純資産の部:332,700円
差額:33,360円
この33,360円が、「未払法人税等」+「繰越利益剰余金」です。
【手順②】
「繰越利益剰余金」の元々の残高7,000円を、33,960円から差し引きます。
33,360-7,000=26,360
この26,360円は、「未払法人税等」+「当期純利益」ということになります。
26,360=「未払法人税等」+「当期純利益」(式1)
【手順③】
「未払法人税等」と「当期純利益」を計算します。
ここでは、損益計算書の最後数行を書いてみると分かりやすいです。
まず、「税引前当期純利益」を仮にxとし、既に計算してある「法人税等調整額」△160円を記入しておきます。

損益計算書上では、最終的な「法人税等」額は、「会計上の税金」の額=「税引前当期純利益(x)」の40%となりますよね。

また、「当期純利益」は 「税引前当期純利益(x)」の60%です。

残ったあと1か所ですが、ここは「法人税等の調整」をする前の税金です。
「法人税等の調整をしない税金」ということは、実際に納税する金額となるので、結局のところここが「課税見込額(0.4x+160)」となります。
今回は「仮払法人税等」も存在していないため、ここの課税見込額がそのまま「未払法人税等」になります。
(「仮払法人税等」がある場合には、課税見込額から「仮払法人税等」を差し引いた分が「未払法人税等」となります。)

よって、まとめると下記のようになります。
未払法人税等:0.4x+160
当期純利益:0.6x
ここで、式1に当てはめていくと、
0.4x+160+0.6x=26,360
x+160=26,360
x=26,200
というわけで、x=「税引前当期純利益」が26,200円ということが分かりました。
そして、「未払法人税等」と「当期純利益」も分かります。
【未払法人税等】
0.4x+160
=0.4×26,200+160
=10,640
【当期純利益】
0.6x
=0.6×26,200
=15,720
「未払法人税等」の方は10,640円をそのまま記入し、「繰越利益剰余金」の方は「当期純利益」15,720円+元々の残高7,000円=22,720円を記入することになります。
本編で計算した数字と合ってますよね!
この辺が難しい場合は、損益計算書の解説記事も、ぜひ読んでみて下さい!
さいごに
解法のまとめ!
①貸借対照表の項目を上から確認し、
②(B)決算整理事項等 を見て、その勘定項目に変化がありそうな整理事項をピックアップし、
③算出された残高を貸借対照表に記入する。
冒頭でもお伝えしたように、仕訳に慣れていないとたくさん間違える解法だと思うので、基本の仕訳ができるようになったら試してみて下さい!
また、ちょっとでも分からなくなったら素直に仕訳してみると、うっかりミスが減ります。
なお、今回は【全ての勘定科目が解答用紙に記載されている前提】での解法でしたが、実際は財務諸表の一部勘定科目を穴埋めしないといけないこともあります。
それでも、似たような問題を何度も解けば、「ここにはこの勘定科目が入るんだろうな」っていうのが分かってくるものです。
まあ、なので結論としては、
基本の仕訳問題や、財務諸表の類題をたくさん解いて、慣れてきたら時短を頑張ろうね!!
ということです。
この記事をお読みくださった方が時短解法を身につけて、合格に近づきますように!
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